短歌2024(抜粋)



2024-12-29 00:16:32
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終わらない夏をおさめた箱を焼き、自由になった冬の寒さよ

朝がくる街の路上でたちすくむ「今日」という日を何も知らない

体温をなくした僕はふりそそぐ月のひかりのつめたさを知る

水底へ沈んでいったきみのこと思い出している雨の夜更け

なんとなくインクのきれたボールペン転がしている雨が止まない

大百合のやうに漂ふオフェリアの見上げた水面みたいな空だ

雨が止みタバコを点けた。夏至だから、夜が来ないね。明日は無いね。

雑踏にあふれるほどの人がいて君の気持ちを誰も知らない

一日が0へ還った夜のはて ねむりはいっとき死ぬことかもね

目の奥が痛いくらいの青空に浮かぶ三日月 きみのつめあと

玉の緒のふとさは同じなれど彼(か)の地では容易く絶たるる日々よ

冬の日のひかりをためた猫の背ではぜる火花よ冬のにおいよ

ゆふぐれの工場跡にたたずみて地底にねむる毒を思ふよ

ブラジルをお日様が通過するころに夜がわたしと月を齧った

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