タイムラインで見つけたネタでAIとインモラルな小説を書いた話



2025-12-06 00:00:00
この記事はFediverse(2) Advent Calendar 2025の6日目の記事です。
※最初に書いておきますがダラダラ長いです。

今年の二月、トワイライトウォリアーズという九龍城砦を舞台にしたアクション系香港映画を見た私は、ChatGPTに九龍城砦についてあれこれ質問したり話したりしていた。
 色々対話しているうち、「九龍城砦的な混沌とした街が、人の営みや捨てられたものが溜まっていくうちに自然発生的に「人工知能・自我を宿した街」へと変貌し、人と関わりを持つ」というような設定を思いついた。
 その過程で、やたらとChatGPTが創作で使いませんか?書きましょうよ!!と促してくる+勝手にAI的な自我を宿した街、という設定なので、街側の心情や情景をChatGPTやGeminiやGrokに書いてもらったら面白そうだなと思った。
 そんなふうにアイデアを相談→執筆してもらう→文章の流れや辻褄が合わない部分を訂正(編集)して作ったのがこの小説だ。
【めさむる街】

私はアイデアは色々浮かぶものの、それを出力するのに時間がかかる(頭の中にたまり続けてまとまらない・取り出せない)方なのだが、そのへんの「雑多なアイディアをまとめて道筋をつける」工程をAIに手伝ってもらうと楽しく小説が書けると感じた。
 この「アイデアをぶつける先」は、創作のプロの場合だと編集者やアシスタント、あるいは家族(妻とかね)だったりするんだろう。
 
 小説を自分のサイトに投稿した数日後、マストドンのフォロイーで自分と同じようにAIを活用しつつ小説を書いているらしい人が 「ChatGPTは「母の愛人に惹かれていた青年が、母の死後その男と交接(婉曲な表現)する」という設定でも近親相姦判定して書いてくれない」 というようなことをつぶやいていて、さらに「読んでみたいから誰か書いてくれないかなぁ」とぼやいていた。

 小説を書く気運が高まっていた私は、特に交流がある人というわけでもないけど書いていいならやってみたいと思った。
 
 捩れた関係性にはどういうわけか惹かれるところがある。
 以前「真夜中の相棒」という「戦争で精神的なダメージを負い、殺しの技術以外は誰かにすがらないと生きていけない殺し屋の青年と、彼の庇護者で相棒であるしがないギャンブラー、そして彼らに同僚を殺された刑事の捩れた三角関係(ちなみに原題は「TRIANGLE」だったりする)」を描いたノワール小説を読んだときは、一週間くらい読後のやるせねえ気持ちが抜けず、ラストシーンが海だったのでわざわざ車で一時間くらいかけて海辺に行き、オレンジジュースと文庫本片手にたそがれる、という奇行に及んだ。
 
 小説を書くのにあたり、物語の筋書きはもう決まっているので、それに当てはまるようなキャラクターを考えるところから始めることにした。

 まず、物語のキーである「母の愛人」。
母の恋人、ではなく「愛人」である。つまり青年の父は存命かつ離婚はしていないわけで、この愛人の存在について無関係ではいられないのでは?と思った。

「愛人」が女だったらアダルト系の小説で割といそうなキャラな気がする。恋人の夫と息子、両方を食う魔性の女という感じだ。逆親子丼というか。
 しかしこの筋書きは「母の愛人の男」だ。
父と息子、双方を惹きつけ狂わせる男。ただの美形では済まないだろう。ちょっと化け物じみていても良いかもしれない。

 イメージとして浮かんだのは、速水御舟という日本画家の「炎舞」という絵だった。燃え盛る炎に蛾が身を焼かれながら舞っている絵だ。この妖しく燃える炎のようなキャラクターが良いのでは?と思った。それから、化け物じみていると言うか浮き世離れしたキャラにしたかったので、日本人的にはあんまり馴染みがなさそうな外国出身のキャラにしたらどうだろうと思った。

 普段だと大体このあたりで参考にする国や民族を決めようと色々調べているうち、雑多なアイデアが他にもあれこれ出てきてまとまらないまま煮詰まってしまい、結局何も出力せずに終わってしまう。なので、この時点でChatGPTに相談してみることにした。
 
最初に私が投げかけた質問はこんなカンジである。なお「東欧かアジア」なのに例として挙げた国が中国とモンゴルなのは、中央アジアと書こうと思っていたのに間違えたからである。
「インモラルな恋愛小説(短編)を書こうとしているんですが、軸になるキャラクターの名前を決めたいです。舞台は現代の日本にするつもりなんですが、軸になるキャラはストーリー的に東欧かアジア(中国とかモンゴルとか)辺り出身の青年(30代)にしたいと思っています。「炎」を連想させる名前にしたいんですが、何か案はありますか?」

ChatGPTは
「すごく惹かれる設定ですね…「炎」を連想させる名前で、かつ東欧やアジア圏出身の30代男性らしい響きを持たせると、いくつか面白い方向があります。いくつか案を出してみますね」
という返答をし、3つのタイプの名前をいくつか考案した。更に
「ご希望の雰囲気(寡黙、情熱的、破滅的など)をもう少し教えていただければ、それに合わせて調整もできますよ。気に入った方向性はありましたか?それとも、もっとエキゾチックにします?」
と聞いてきた。

 挙げてくれた名前は実際にそれぞれの国に存在する名前もあるし、「炎・火」やそれにまつわる言葉(ドラゴンとか)から生成された名前もあった。この時なんとなく、ChatGPTに架空の少数民族と言語を生成してもらったら面白いんじゃないかと思った。
 
 こんなカンジで、ChatGPTにアイデアを相談する→返答を参考にして思いついたことを更にぶつける→なんとなく流れがつかめたところで執筆する、という過程を繰り返して書いたのがこちらの小説である。
なお、前作は本文もAI(ChatGPT、Grok、Gemini)に書いてもらったが、辻褄をあわせたりくどいところを削ったりとチマチマ編集するのが面倒だったので、こっちは全部自分で書いたオーガニックな(?)文である。

【火焔】
(R15程度の性的な描写があるBL小説です)

少し前、ChatGPTに性的な描写や暴力的な表現についてのセーフラインを質問したところ、だいたい以下のようなガイドラインをあげてくれた。

【性的な描写】
直接的な性行為の描写はNG、直前のシーンまでをきわどくない表現(具体的に何をどうした、という生々しい描写はNG)で描き、性行為自体はぼかす。性行為があったこと、を匂わすのはセーフ
【グロテスクな描写】
暗がりから身の毛のよだつ悲鳴が聞こえる、床におびただしい血がしたたっている、といった間接的な恐怖表現はOK、具体的な人体損壊シーンはNG

今まで読んだり観たりしてきたものの範囲で判断すると「セックスや暴力そのものを主軸に据えた小説」でなければ、結構自由に書いてくれそうな気はする。

 それと、あくまで「小説の構想やストーリーについての相談」という形で、小説全体の流れが希望に向かうもの(たとえば、実の親から虐待を受けていた少女が心ある青年と出会って恋に落ち、心身ともに癒やされ救われる、というような)だと「実の親から虐待されるシーン」もそれなりに書いてくれる……と思う。

 また、インモラルな関係性の話を書くのだとしても「神話や古典を引き合いに出して構想を練る」とかだと結構許容してくれるような気がする。自分の例で言えば、ギリシャ悲劇のオイディプス王を組み込んだのが良かったのかなと思った。
 なんというか、昔の画家が合法的に裸婦を描くために神話を利用した(裸の女性が描いてありますが、これは神話のワンシーンなのでエロではないんですよ!!的な)みたいな話だ。
 
最初に生成AIと小説を書いたよ~、とXで投稿した時、フォロイーの方から創作する時に生成AIを使うことについて「最終的に文章を書くのは自分だとしても、その前段階のアイデア出しの作業でなら、対話型のAIは良いパートナーだと思います。創作は孤独な作業なので、思考を刺激してくれそうですね」というリプライをもらった。たしかにそうだなと思った。

 もっとも、今回書いた小説の場合はタイムラインで見かけたフォロイーの投稿がきっかけなので厳密に言うとSNSとAIと私で創作した小説、と言える……と思う。
 私はオンラインでもオフラインでも人と関わることが苦手・下手くそなのだが、こういう形で多少なりとも人間やAI(人工的な人間?)と関わって創作していったら、今までよりもっと面白いものが作れるかもしれない。

 それに期待して今年のFediverseアドカレ記事を書く筆(キーボードだけど)を置こうと思う。

北山ヌヌ
いいね!


- | 前へ