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2025-04-29 23:00:37
4.変容
父のことを聞けないまま逃げるように店を後にして、それからずっと冬雅の意識の底で、あの男――ザリャが呟いた言葉が蠢き続けていた。 夜ごと眠る直前には、あの舌の感触と共に水底から音もなく現れる魚のように
2025-04-29 22:47:17
3.古書ヤガ
探したその店は、商店と住宅が入り混じる駅前通りの路地に在った。 立っているだけで生きとし生けるものたちの生気が押し寄せてくるような湿った空気と、何もかも漂白してしまう眩く初夏の日差しを避け、路地の黴
2025-04-29 22:44:09
2.秘密
捜索願を出したものの、父の行方がわからないまま一ヶ月が過ぎた。 父の周囲の人々は「多忙と妻の死からくるストレスで、健忘症にでもなったのではないか?」という見解で一致していた。妻の不貞に気づいた素振り
2025-04-29 22:32:02
1.赤い手帳
「蛾は火に向かって飛ぶ、思慮もなく、知ることもなく」 熱譫妄の合間、冬雅(とうが)の母はふと我に返ったような声でつぶやいたという。つきそっていた彼女の夫は意味を問うたが、答えはなかった。 それから
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