hallucino
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2025-05-17 12:34:10
「火焔」メモ(あとがき)
今回の小説を書いた経緯 マストドンのフォロワーさんが「母の愛人に惹かれていた青年が、母の死後その愛人と交接する」という設定の話を誰か書いてくれ〜、と投稿していて、 そういう投稿を見かけて気になったら空
2025-05-17 12:30:19
10.新しい街
築年数は古かったが、新居はやはり新居の匂いがした。 少ない荷物を片付けて窓を開けると、青々とした木々が茂るおだやかな住宅地が広がり、その先に霞んだ海がうっすらと見える。吹き込んでくる温かな風にも、ど
2025-05-13 23:14:22
9.業火
名前を呼ばれた気がした。 ぼんやりした意識の中の、立ち籠めた煙のような闇の向こう側に誰かがいる。 ――冬雅、哀れな小さな蛾よ。おまえは火に焼かれている、おまえの父が負った呪いの火に 聞き覚えのある柔
2025-05-13 22:20:14
8.喪失
数日後、冬雅は父親が火事になった雑居ビルの一室で焼死体として発見された、と知らされた。ビル周辺の状況からすると、行方不明になってからずっとそこにいたらしい。 火の勢いが激しく、室内のものはほとんど燃
2025-05-13 22:10:12
7.岐路
何かに願ったわけではないが、今日は早く仕事が終わり、定時で帰宅することになった。 帰り支度を整えながら冬雅はひそかに母の手帳の今日の日付を開いた。何度も見た例のメモと、あの男の写真をもう一度見つめる
2025-05-13 22:04:43
6.火の目
ひたすら自分を追い続ける視線がある。 姿は見えない。ただ、どこかからじっと観察されている。というか、粘りつくような熱を持ってじっと「見られている」のがわかる。悪霊や呪いとは違う、あきらかに人間の視線
2025-04-29 23:00:37
5.変容
父のことを聞けないまま逃げるように店を後にして、それからずっと冬雅の意識の底で、あの男――ザリャが呟いた言葉が蠢き続けていた。 夜ごと眠る直前には、あの舌の感触と共に水底から音もなく現れる魚のように
2025-04-29 22:47:17
3.古書ヤガ
探したその店は、商店と住宅が入り混じる駅前通りの路地に在った。 立っているだけで生きとし生けるものたちの生気が押し寄せてくるような湿った空気と、何もかも漂白してしまう眩く初夏の日差しを避け、路地の黴
2025-04-29 22:44:09
2.秘密
捜索願を出したものの、父の行方がわからないまま一ヶ月が過ぎた。 父の周囲の人々は「多忙と妻の死からくるストレスで、健忘症にでもなったのではないか?」という見解で一致していた。妻の不貞に気づいた素振り
2025-04-29 22:32:02
1.赤い手帳
「蛾は火に向かって飛ぶ、思慮もなく、知ることもなく」 熱譫妄の合間、冬雅(とうが)の母はふと我に返ったような声でつぶやいたという。つきそっていた彼女の夫は意味を問うたが、答えはなかった。 それから
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